プラスチック汚染との闘い:歴史的な国際条約締結への挑戦
- スタッフ
- 8月6日
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私たちの日常生活に欠かせないプラスチックが、今や地球規模の環境問題として世界を悩ませています。2025年8月5日、スイスのジュネーブで始まった国際会議は、この深刻化するプラスチック汚染に立ち向かう画期的な取り組みとして注目を集めています。

なぜ今、国際条約が必要なのか
深刻化するプラスチック汚染の現状
プラスチック汚染は、もはや一国だけでは解決できない地球規模の課題となっています。UNEP(国連環境計画)の報告書によると、プラスチックごみによる汚染の経済損失は:
年間3000億〜6000億ドル(約44兆〜88兆円)
全世界規模での深刻な環境・経済的影響
この驚異的な数字は、プラスチック汚染が単なる環境問題を超えて、世界経済にも大きな打撃を与えていることを物語っています。
国際的な枠組みの必要性
2022年の国連環境総会の決議を受けて設置されたこの取り組みは、世界初のプラスチック汚染防止に特化した国際条約の締結を目指しています。なぜ国際条約が必要なのでしょうか?
プラスチック汚染は国境を越えて広がる問題
各国バラバラの対策では効果が限定的
統一された国際基準とルールが不可欠
今回の会議の背景と課題
前回会議での合意見送り
2024年12月に韓国で開催された前回の協議では、残念ながら合意に至りませんでした。
その理由は:
EU等の立場
プラスチックの生産量規制の必要性を主張
より厳格な製造段階からの対策を求める
産油国(サウジアラビア等)の反発
プラスチック原料となる石油産業への影響を懸念 -生産規制に強い反対を表明
この対立構造が、条約締結への大きな壁となっています。
新たな政治的要因
今回の会議には新たな複雑さが加わっています。アメリカでトランプ政権が発足し、パリ協定からの離脱を宣言するなど、環境政策に対する消極的な姿勢が懸念されています。

専門家の見解と今後の展望
東京大学・高村ゆかり教授の分析
環境問題の国際交渉に詳しい高村教授は、現在の状況を以下のように分析しています。
共通認識の存在
プラスチックごみの適正管理・処分の必要性については各国が同意
国際条約の枠組み自体への理解は進んでいる
主要な課題
生産段階の規制については産油国の強い反対
「簡単に合意できるものではない」現実的な困難
日本への期待
高村教授は日本の役割について、特に期待を寄せています:
アジア太平洋地域でのプラスチック問題への積極的貢献
各国からの信頼と期待
条約締結に向けた橋渡し役としての役割
アメリカの政権交代が与える影響
トランプ政権の環境政策への懸念
新政権の環境問題への取り組み姿勢について、専門家は以下の点を指摘:
これまでの建設的な対応から方針転換の可能性
地球環境問題の優先順位低下への懸念
国際的な環境協定からの距離感
現実的なアプローチの重要性
段階的な取り組みの必要性
高村教授は、完璧な解決策を一度に求めるのではなく、現実的なアプローチの重要性を強調しています:
即座の厳しい対策でなくても、将来への足がかりを築く
条約の中に対策の検討プロセスを盛り込む
長期的な視点での段階的な改善
今後のスケジュールと注目点
会議の詳細
開催期間:8月5日〜14日(9日間)
参加予定:約170の国・地域の代表
開催地:スイス・ジュネーブ

成功への鍵
UNEP事務局長のアンダーセン氏は会議の冒頭で、「今こそ、各国が合意すべき時だ。世界はプラスチック汚染の危機に対処することを望み、必要としている」と強く呼びかけました。
未来への責任
プラスチック汚染問題は、私たち一人ひとりの生活に直結する問題でありながら、その解決には国際的な協力が不可欠です。今回の会議は、人類がこの地球規模の課題にどう立ち向かうかを示す重要な試金石となるでしょう。
各国の利害を超えて、地球環境と未来世代への責任を果たせるか。世界が注目するこの9日間の議論の行方に、私たちも関心を持ち続けることが大切です。
この記事は2025年8月5日のNHKニュースを基に作成しました。
最新の会議進展については、継続的な情報収集をお勧めします。
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